年明けからスマホ界隈ではこんなニュースが話題になっています。

オンラインゲームに時間制限 香川県、依存防止へ条例案
ネット・IT 四国 香川
2020/1/11 2:00

これからパブリックコメントを募るということなので、有識者との協議の上で議題がまとまりつつある・・・といった段階なのでしょうが、平日60分、休日90分など具体的な数字が出ていることで、さも決定したかのような雰囲気を醸し出しています。

ちなみに大阪でも同様の検討がなされているとの一部報道もありましたが、実際の会見では意味合いがかなり異なるようです。

大阪市のスマホ・ゲーム利用規制報道は本当? 会見では「専門家を交えてのエビデンスの確認が必要」と回答

大阪市の松井市長の発言はもっと慎重のようですね。

さて香川県が一石を投じたゲーム等の利用時間に規制を設けるという条例案ですが、果たしてこの規制は有効なのでしょうか?

ゲームの長時間利用は問題行動

私自身は、ゲームやネットの長時間使用は問題のある行動だと認識しています。
スマホが普及したことでゲームやネットがより身近な存在となり、一日の時間の多くをゲームやネットに費やすことに繫がっていますが、

「過ぎたるは及ばざるがごとし」

いくら楽しい時間が過ごせていても、普段の生活や社会活動に影響が出るような偏った利用をするべきではありません。

だから香川県議会の議員達が、青少年健全育成の観点から問題視していることは理解できます。

今回の条例の素案はこちらでも紹介されています。

【ゲームは1日1時間】香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の素案全文

全体を読む限りでは、報道で言われているより問題があるように思えませんけどね。

今回の件の何が問題なのか

では今回の件の何が問題なのでしょうか?

ゲームは嗜好ですから、喫煙や飲酒と同じくユーザー側に責任やモラルが求められます。
飲酒運転は言わずもがなですが、最近では受動喫煙の問題で喫煙自体にも条例が定められていたりします。

望まない受動喫煙防止を目的とした改正健康増進法が令和2年4月より全面施行されます

しかしゲームにまで条例を定め、上から押さえつけるような対応をとることはどうなのでしょう。

今回の問題は、嗜好あるいは子どもや家庭の問題を国や自治体が規制するということ。
さらにはゲームをすること自体が問題であるように捉えられている点もあると思います。

条例案の中にゲームの時間は平日60分、休日90分といった数字が登場していますが、恐らくココに確かな根拠はないと思われますし、第一どうやって使用時間を管理できるのかと・・・
たばこの本数や飲酒量などが確認できないのと同じですね。

そういうこともあって、「なにも分かっていない大人が、子ども達を法律で縛り上げようとしている」という世論が生まれているのではないでしょうか。

規制で縛るのは簡単だけど

スマホが普及し、ゲームやネットの接触機会が増えたことで、私たちの社会活動やコミュニケーションの在り方が変わってきたことは事実です。
このテクノロジーの進化は、よりよい社会を目指した進化の過程でもあるわけで、ゲーム、そしてネットやSNSを悪者にしてしまうのは筋違いだと思っています。

我々大人もスマホやネットの恩恵を享受しながら社会活動を行っていながら、子どもの指導管理は法律頼りというのは情けない感じがしませんか?

ゲームやスマホの利用を法律で制限したとして、果たしてなにが良くなるのでしょうか?
子ども達からゲームを取り上げたとして、それに変わる楽しみややり甲斐、そして経験を与えることができるのでしょうか?

私としては、規制で縛ることは問題を覆い隠しただけで、なんの解決もできないと考えています。
こんな法律ができて喜ぶのは、子ども達を取り巻く大人、特に親や学校の先生方かもしれませんね。

親が言ってもいうこと聞かないから、

「ほら!法律だからダメなのよ!」

と、言いやすくなるでしょうし(笑)

ただそれは何も解決してくれません。

どうしてダメなのか?

どうすればいいのか?

ここをしっかり伝えない限りは・・・

今必要なのはスマホやネットのメリットを教えること

私はこのブログで度々書いていますが、児童生徒向けの授業や講演では、「いかにSNSやスマホを楽しく使うか」をテーマにしています。

本来インターネットは自分を成長させてくれる最良の環境の一つです。
そしてスマホはその道具であり、SNSやゲームは手段なのです。

正しい使い方は、自分を成長させてくれるし、自分の成長は社会の成長に繫がります。
だからこそスマホやSNSをメリットを伝え、正しく適切な使い方ができるよう指導する必要があります。
情報の扱い方、人とのコミュニケーション・・・伝えるべきことはたくさんありますが、「前向きに使わせること」が前提となります。

もちろんスマホやネット、ゲームというテクノロジーの恩恵を正しく享受するために、知っておくべきこと、気を付けるべきことも伝えなくてはなりません。
ここで初めて注意点などが登場するわけですが、メリットを享受するための方法として「デメリットを理解させる」というのが私の考えです。

これはダメ!あれもダメ!

こんなのは情報モラル教育ではありません。

こうしよう!やってみよう!

スマホやネットを正しく使わせることが情報モラル指導です。

子どもへの指導機会を増やすことが必要

ただ今回の条例案の中にも書かれていますが、子ども達に対して情報モラルを指導する時間や機会はもっと増やすべきだと思います。
何百時間もあるカリキュラムの中で、1年に1回、1時間だけお話しできたとしても、それが効果的かは疑問です。

福岡市内のある小学校では、3、4、5、6年生各学年の授業を年に2回開催させていただいてます。
今年で4年目くらいになるので、今の6年生は3年生の時から、何回も僕の話を聞いてくれたことになります。
そのおかげで、その学校の児童の動向や小学生の実態を知ることができています。

機会や時間が増えれば、ワークショップを頻繁に行ったり、もっと児童生徒に寄り添った情報モラル指導が可能になるでしょう。

機会が増えること、そして継続できること。

情報モラル教育は、早い段階から、何度も続けることが大切だと思います。

条例で子どもを縛り付ける案を出すくらいなら、もっと情報モラル教育の機会を増やすための策を検討していただきたい。

目に見えない条例は、子ども達に何も教えませんから・・・

ただ子どもの未来を思う大人の気持ちは同じです。
賛否はあるでしょうけど、香川県議会にしても大阪市にしても、慎重かつ実のある議論を重ねていただきたいと切に願いますし、エールを送りたいと思います。

私自身も年間で数十回の授業や講演を行っていますが、次年度以降も積極的な情報モラル指導の機会を作っていくつもりです。

さぁ大人の皆様、
あなたは子ども達になにを伝えますか?