1月26日(日)に熊本市で開催された文部科学省委託事業 ネットモラルキャラバン隊に参加させていただきました。

この事業はこれまで多くの都道府県で開催されています。
このキャラバン隊は何年も前から実施されていますが、私としては実は初参加。
PTAとかから外れると、こういったイベント情報がなかなか入ってこないんですよね。
今回は私が福岡市PTA協議会の理事を務めていた時代からの交流があった日本PTAの先輩方から、福岡から近い熊本であるということで教えていただきました。


会場は熊本城ホールだったのですが、最近オープンしたという新しい商業施設「さくらまちスクエア」と隣接しており、とても綺麗で賑わいのある場所でした。

しかもバスセンターが併設されていて、バスで来ても雨に濡れることもなく直結でした。

会場に入ると早くから参加者が受付にいらっしゃってましたので、私も会場に入り、わりと前方の席を確保。


開会を待ちました。

いよいよ開会

13時に開会行事が行われ、その後に文部科学省や警視庁の方からの青少年のインターネットや性的被害についての最新情報が伝えられました。
私もネットやスマホに関する最新情報を常に収集するようにしていますが、国や警察の取り組みについてしっかりと学ぶことができました。

特に警察庁の天野氏のお話では一昨年、座間市で起きた殺人事件や昨年の大阪市女児誘拐事件などにも触れ、青少年のネット被害対策は待った無しの状況であることがわかりました。
同じ性的被害でも、内容により事件の取り扱い方が変わることもあるようですので、私たち大人も青少年の性的被害には常に関心を持つことが大事だと思います。

若者の若者による若者のための授業参観

その後、メインとなるセミナーが開催されました。
セミナー・・・ではなく「授業参観」となっていて、ステージには教室のように机が並んでおり、そこに熊本の中高生が20名ほど上がっています。
そこに熊本市教育委員会事務局の田中氏が先生役のファシリテーターとしてお話をされていました。
保護者を中心とした参加者もスマホを用いて意見や質問などを寄せられるようになっており、ステージと会場が一体となったワークショップの様相です。

そいう中で取り上げられたテーマは
「SNSは人を幸せにする。なのになぜ、私たちは傷つくのか・・・」という大変興味深いものでした。

授業参観よろしく始まったワークショップですが、テーマに沿った課題について、生徒の意見や「観客」である保護者の方の声なども反映させながら、話し合いが進みます。

子どもの意見

「大人は否定的なことを言い過ぎ。そのくせ大人もスマホを使いすぎ。」
「リアルの人間関係で悩みを相談すると、迷惑かけそう。だけどネットの友人ならすんなり話を聞いてくれる。」
「ネットで気軽に話していけないのだったら、ちゃんと話を聞いてくれる環境を作って欲しい。」

一方大人の意見

「あなたが親ならどういう指導をするの?」
「学校で顔を合わせてるのだから、ネットでそこまで界隈する必要ないんじゃないの?」

ここで少しずつ明確になってきたのは、生徒たちの声と大人である保護者との距離感です。
子供としてはこう思っているのに、親は・・・
親はこう思っているのに、この子は・・・みたいな。

お互いに立場が違うので、考えが異なることは当然ですが、その差を明確に意識し、大人と子供の距離感を図ることは大切なことです。
客席にいた私としては、周囲の保護者の方のリアクションが興味深く、軽く動揺する保護者のため息が、差の大きさを物語っていましたね。

その辺りを意識して両者の思いを聞くと、SNSやネットトラブルの問題点やその本質が見えてきます。

「多くの学生は悩みを抱えている。そんな中で次の一歩を踏み出すためのきっかけを探している。」
サポートで参加していた大学生の発言ですが、子ども達のリアルな発言は、いろんな示唆を含んでいます。

参加している生徒たちも、非常に正直で、的確な答えができていることに感心しました。
田中氏の導きもあり、生徒たちも普段なら忖度していいにくそうな(笑)ことでも、素直に思いを話してくれてたと思います。

さて2時間を越える授業が終わり、次は兵庫県立大学の准教授、竹内氏の総括が行われました。
先ほど授業を受けていた数名の高校生と、講師役を務めた大人数名も交えたディスカッション形式で話は進みます。

竹内氏の多くの実績や事例から導き出されるお話の内容は頷くばかりでしたし、生徒達の意見をちゃんと受け止めた上でまとめていただいてました。

このディスカッションにおいても、大人が気付きにくい子ども達の思いや考えが伝わってきましたし、専門家も交えた話の中で、情報モラルに関する本質的な問題がさらに明確になってきます。

そして実際に子どもを標的とした事件があちこちで起きているし、巻き込まれる可能性は高いことも伝えられました。

情報モラルの本質

世の中でもスマホやSNSが絡んだ事件が報道されたり、ネット依存が大問題だと言われていますが、この「ネット問題」とは、何が悪いのでしょうか?

スマホ?
SNS?

今回のワークショップやディスカッションで感じたのは、ネット問題というのは人の心の問題であるということです。
竹内氏も明確に仰ってましたが、暴走族、喫煙、ゲーム・・・時代時代でツールは変われど、結局は子ども達の心の問題に起因しているとのこと。

つまりスマホやSNSというツールを排除したとしても、使う人の心のケアに努めなければ問題の解決にはならないということですね。

なぜネットに依存するのか?
なぜ会ったこともないネットの人と友だちになれるのか?

今、ネット問題とされていることの多くは、人間の心や社会全体の問題に起因しているとするならば、スマホやネット問題の解決策は別にあるのだともいえます。
情報モラルとは、使う人の心としっかり向き合うことではないでしょうか。

ルールの前に必要なこと

情報モラルの基本は家庭でのルール作りだと言われています。
私も講演の際にそうお話しすることもありますし、ルールが大切であることは承知していますが、今回のネットキャラバン隊の話を受けて考えると、ルール作りの前に大切なことがあるということを感じます。

大人がルールを勝手に作り、それを子ども達に押しつけることが解決に繫がるのか・・・今日の生徒達の意見を聞いていると、そう単純とは思えません。

我が子とのスマホ/ネットルールは、親子でしっかり話し合うことが大切なのです。
ルールが不要なのではありません。ルールの成り立ちが重要だということです。

子ども達がどういう思いを持ってスマホやネットに向き合っているのか。

まずは保護者の方が、ちゃんと耳を傾ける必要があると思います。
一方で親としての思いや願いも子どもに伝えるべきです。
そして我が子を被害者にも加害者にもしたくないという正直な気持ちも・・・。

お互いに相手の話を聞き、納得いく線でルールを決めていく。

ルール作りの絶対条件は親子の話し合いです。

話し合いもなく、親から与えられたルールは効果がないともいえるでしょう。
ましてや他人が考えたルールなんて・・・言わずもがなですね。

今回のネットキャラバン隊を受けて

今回熊本で参加させていただいたネットキャラバン隊ですが、本当に中身が詰まった素晴らしい機会でした。
私自身も10年近く情報モラルについての講演や授業を数多く行っていますが、学ぶべきことはまだまだたくさんあるのだと改めて気付かされました。

子ども達の言い分に耳を傾けること。
そして純粋な子ども達に適切な使い方を教えること。

ここで学んだことを活かしながら、今後も子ども達のために情報モラル啓発に努めたいと思います。

そしてこの取り組みには、もっと多くの保護者の方に参加していただきたいと思います。
今後も全国で開催されるようですので、お近くで開催の折にはぜひとも参加していただきたいと思います。

ちなみに今回のネットモラルキャラバン隊熊本は、第4回桑崎剛記念情報モラルセミナーと併催という位置付けでした。
桑崎先生は熊本の中学校等で教鞭を執られていた、携帯電話の情報モラルに関する第一人者であります。
残念ながら桑崎先生は4年前に故人となりましたが、生前は私もお世話になりました。

福岡で開催される私の講演や講座にも足を運んでくださるなど、大変熱心でフットワークの軽い方でした。

尊敬すべき桑崎先生への敬意と、今後の情報モラル指導の発展を心に誓った一日でした。