大阪不明女児保護 誘拐と監禁容疑で男を送検
2019.11.25 13:46 産経新聞

大阪市の小学6年生の女児が誘拐されるという事件が発生しました。
大阪から連れてこられた小学生女児は監禁先から逃げ出し、交番に駆け込んだことで事件が発覚。
未成年者誘拐の容疑で栃木県の男性が逮捕されています。

報道によると、容疑者と6年生の女児がSNSで交流。
「もう一人いる女性の話し相手になってほしい」と誘い、6年生女児が住む大阪を訪ね、女児を連れて栃木の自宅まで連れて行ったということです。

女児が持っていた携帯電話や靴を取り上げられたということなので、容疑者が監禁目的で女児を誘い出したということは間違いないでしょう。
しかもこの女児のほかに、茨城県の女子中学生も容疑者宅にいたということで、事件はより複雑な状況であると思われます。

事件の真相については、追って明確になると思いますので、その後の情報を待ちたいと思います。

今回の事件で噴出する「子どものSNS利用」の非難

ここでメディアでも話題になっているのが、「小学生女児がSNSを利用する」ことについての是非です。
具体的にどのSNSを利用したのかはわかっていませんが、Twitterを始め多くのSNSサービスは13歳未満の利用を否定しています。

Twitterであるならば、本来は小学生女児が利用してはいけないことになっているので少女側にも問題が出てきますが、報道で言われているSNSというのはLINEのことかもしれません。

私の想像ですが、最初はオンラインゲーム等で繫がり、後にLINEで連絡を取り合ったのではないかと思われます。
とにかく子どもがSNSで交流し、自分の意思で容疑者に付いていったのであれば、「子どもにも問題がある」的な解釈をされてしまう可能性もあるでしょう。

もしTwitterであるならば、アカウント作成時に年齢虚偽していた可能性もあり、その点も問題ですね。

追記:被害者の小学生女児と容疑者のやり取りに使われたSNSはTwitterのダイレクトメッセージだそうです。

小6女児誘拐 ツイッターの非公開で会話できる機能でやりとり

 

それを反映するように、Yahoo!ニュースのコメントなどを見ていると、小学生や子どもにスマホを持たせたり、SNSを利用させたりする現在の状況を危惧する意見が大半を占めているように思えます。

「スマホを持たせた親が悪いんだ!」

「そろそろスマホやSNSは禁止にすべきだ!」

みたいな極端な声も飛び交っていますが、私としてはスマホやSNSを子どもから取り上げることで全て解決するとは思いません。
じゃあ中学校ならいいのか?いや高校か?みたいな話は単なる問題の先送りに過ぎません。

ただ間違いないのは、やり玉に挙がっている子どものスマホやSNSの利用というのは「原因」ではなく「要素のひとつ」だということ。

一番悪いのはSNSを利用して少女を誘い出し、監禁した容疑者です。
容疑者が犯した犯罪については今後明確になっていくと思いますが、事件の真相を明白にし、必要な処罰を受けるべきです。

そして今回の小学生女児のネット接触、更には女子中学生のネット接触についても、その背景をしっかり見つめるべきだと思います。

インターネットは空気な存在

私も多くの小中学校で生徒向けの講演や授業を行いますが、私が見る限り小学生はインターネットについて無防備な子が多いと思います。
スマホやネットの利用方法は知っているけど、本来の目的やメリット、そしてデメリットと危険性を感じていない雰囲気がありますし、ネットという社会の公器に対して、ある意味純粋だともいえます。

つまりネットは子ども達にとっては「空気」なのです。

しかし現在の情報モラルの方向性は、

「スマホやSNSは使わせたくない」

「事例を見せて怖がらせろ」

的なアプローチが多く、目的や活用法を教える前にデメリットと危険性ばかり詰め込んでいるようにも思えます。
ネットが空気のような存在の子ども達からすれば「なんで?」みたいな感覚でしょう。

一方で親を含めた世の大人たちは、多くがスマホを手に過ごしているのですから、いくら子どもたちに「危ない!」と言い続けていても、彼らにとっては矛盾にしか映らないでしょう。

それでは、今回のような事件が再び起きないようにするために、子どもたちに対してどのように向き合うべきなのか?

大前提として、インターネットが現代社会の公器である以上、適正利用を指導し続けることが必要となります。

子どもに対する向き合い方

子どもたちに対して、インターネットがどのような存在なのか、どう利用するべきなのか、について時間をかけてでも伝えるべきだと思います。
そしてその流れで注意事項や禁止事項を伝えなくてはなりません。

現在の情報モラル指導は「危ない」が全面に立ちすぎている部分もありますが、リスクを訴えることが重要な指導であることに変わりはありません。

メリットとデメリット、合法と違法、

つまり「やってみよう!だけど気を付けよう!」順番とバランスなのだと思います。

先に危険性ばかり訴えても、順番を間違えればトラブルを防ぐことは難しいでしょう。
そのためにもスマホやSNS利用のルールは大人が理解し、子ども達に指導する必要があります。

重要なことは「自分事」にさせること

メリット、デメリット・・・どちらの話にしてもネットやスマホの利用を「自分事にさせる」というのは重要です。
特に子ども達に、ネットでのトラブル事例で怖い話をしたとしても、「ひとごと」として受け止め、話すら聞いてくれないということがあるかもしれません。

私はインターネットで広がる世界が、子ども達に夢や目標を抱かせるのだと信じています。
ですからインターネットやスマホの適正利用が、自分たちの力になるんだ、ということを「自分事」のように受け止めて欲しいと思いますし、そういう伝え方を常に考えています。

ネットやSNS、スマホを使うことで、自分はどんなことができるのか?
どんなんことが楽しくて、どんなことが辛いのか?

もし困ったことが起きたら、その時にどうすればいいのか?

など、子供とインターネットを向き合わせ、考えさせる機会がもっと必要なのだと思います。

子どもをトラブルから守る保護者の責任

子供にスマホを与えることも、我が子のネット利用を把握することも、すべては保護者の責任です。
そういう意味でも今回の事件では、保護者の管理不足は否めません。

子どものスマホ利用について親もチェックをしていたのだと思いますが、小学生の我が子にスマホを持たせた以上は、それ相当に厳格な管理と指導が必要でした。

先にも記した通り、13歳未満の児童は多くのSNSが登録、利用ができないことになっています。
子供たちは大人の真似をしてSNSを始めたがりますが、そもそものルールは親が教えてあげないといけません。
それすらも知らなかった保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的なルールは学ぶ必要があるでしょう。

またLINEであれば、利用に関して年齢制限(一部機能の制限あり)がありませんから、保護者の方も子ども自身も何の疑いも無く利用しているかもしれません。

それはもう一人の女子中学生のご家庭にも言えることです。
子供たちは思春期になると、いろんな悩みを抱えたりすることもありますが、それも含めて保護者の方が見守る必要があります。

保護者の方から「親が知識がなくて指導できない」といった声を聞くことがありますが、知識なんて関係ないと思います。
我が子を育てる!必死になって我が子を守る!という強い思いがあれば、子供のいろんなことが気になるはずです。

今後、「子どもが勝手に覚えてきた・・・」みたいな認識だと、大人は後手に回ります。

「子供の方が大人より詳しいから・・・」みたいなことを苦笑いできるようなことは今後許されないと思ってください。

子どもにスマホやネットを使うための環境を整える。

子供にスマホを持たせる以上は、少なくとも「フィルタリング」や「デジタルウェルビーイング」といった健全なネット利用環境を整えることが重要です。

フィルタリングは 通信会社の回線に利用(アクセス)制限を設けること、デジタルウェルビーイングは、スマホの利用時間を制限する機能です。
そしてスマホにセキュリティソフトを入れるなどして、我が子のスマホの位置を確認できるようにすることも必要でしょう。

これらの環境を整えるだけでも、ネットトラブルから子供を守る確率がアップすると思いますし、我が子にスマホを与える際の「条件」でもあります。

ネットを子ども達の逃げ場にしないために

今回の誘拐事件はSNSが要因のひとつとなり、スマホやSNSを小学生に持たせたことが問題として取り上げられていますが、私としてはネットの世界に飛び込んでしまう子どもの背景が気になります。
今回の小学生女児も、もう一人の女子中学生も、オンラインゲームをきっかけに交流していたという情報もあるので、共通の話題もあって、容疑者に対して気を許したのかもしれません。

いずれにせよ、子供たちにとって、ネットは隠れ家や避難場所になっているのかもしれませんし、今回の容疑者もそのような子供の側面を知っていて、犯行に及んだとも考えられます。

今回のような事件を防ぐためにも、子どもたちがネットやゲームに非難しないですむような社会環境を作っていかないといけないと思います。

ネットやスマホは正しく利用すれば、子ども達の将来や未来を見せてくれる羅針盤になるはずです。
子どもがこの先、ネットのメリットを享受できるような環境を作るべきだし、社会人の先輩である私たち大人がよい手本を見せられるよう努めたいですね。