皆様こんにちは。
株式会社伝えるを考えるの置鮎です。

6月に入り、情報リテラシーに関連する講演のご依頼が増えてきましたが、これから7月いっぱいは夏休み前ということで青少年のネット利用に関する話が中心となります。

そんな中、とても残念な事件が報道されました。

北海道に住む17才の女子高生が旭川市内の橋から転落し、遺体となって発見されたというもの。
この件で、恐喝、殺人との疑いで、同じく北海道の21才女性を逮捕。
さらに共犯者として未成年含む計4人が逮捕されたということです。

ニュースリンク→女子高校生殺害 容疑者「橋から落ちたかは知らない」と否認

事件の内容や背景については現在捜査が進んでいると思われるので、いずれ明らかになると思いますが、とにかく前途ある若者が命を奪われるというのは残念でしかなく、親御さんもさぞかしお辛い気持ちだと思います。

さて事件については今後の解明を待つとして、現時点で報道されている範囲で確認すると、事の発端は、被害者の女子高生が、容疑者のSNSの画像を無断利用したとしてトラブルになったようです。

どのSNSか、といった詳細がわからないので推測にはなりますが、容疑者がTikTokやInstagramに投稿した画像あるいは動画を、女子高生が無断でシェア(共有)し、それを容疑者本人あるいは知人などがそれを見つけたのでしょう。
そしてそのSNSのメッセージ機能を利用して女子高生に連絡を取り合い、そこから事件へと発展したのだと思われます。

理由はどうあれ、恐喝や監禁、ましてや人の命を奪う行為は容認できません。

ただこの事件、対応によっては防ぐことができたかもしれないので、それも重ねて残念ではあります。

■リスクヘッジとしての情報リテラシーはどうだったか?

ここからは一般的な情報リテラシーの観点でお話しするのですが、私が感じたポイントは2つあります。

1,コンテンツの共有のカジュアル化

コンテンツとは「情報の中身」そのものを指す呼び方ですが、ここではSNS投稿をコンテンツと称することとします。
そもそもインターネットにおいて、情報を共有することが「目的」のひとつでもありました。
情報をインターネット上に集積し、誰もがその情報を共有することによって情報伝達の迅速化と拡散やコミュニケーション推進など様々なメリットが考えられます。

さらに2000年代後半から次第に普及し始めたSNSでは、個人レベルの感想や見解、アイディアなどが簡単に共有できるようになります。
これはユーザー一人一人がPCやスマートフォンといったインターネット端末を持つようになり、情報の発信が容易になったためであり、そのことで情報がより迅速に動き、より細やかになります。

このSNSにおける情報共有、馴染みの言い方をすれば「シェア」になるわけですが、現在の青少年や若い世代からすると「あたりまえ」の機能であり、ある意味カジュアルな存在になっていると思います。

そのカジュアルさ故に、著作権や肖像権といった法的ルール、プライバシーの考え方が薄まってしまっているのではないでしょうか。

今回の事件に関していえば、この「コンテンツ共有」がきっかけとなっており、シェアした側(被害者)も悪気がなく、単に面白いと思ったから気軽にシェアしてしまったのかも知れません。
(もちろんシェアの仕方や表現によって変わってきますが・・・)

そしてシェアされた側(容疑者)も、投稿そのものは気軽にやっていたはずですが、果たしてシェアされてしまう=拡散されてしまう可能性やリスクを感じていたのでしょうか。

本来、情報共有というのはインターネットやSNSの最大のメリットであるはずですが、SNSの普及により、コンテンツ(情報)に関する意識が双方に足りなかったのではないかとも感じます。
そもそもSNSにはリポストやシェア、リミックスなど情報の再利用が標準装備されていますから、意識が薄くなってしまうことも理解できますが、それでも無許可シェアがトラブルを生むことがあるということを私たちは知る必要があります。

2.SNSトラブルの対応について

ここについては私自身も含め、多くの方々が講演や研修等で啓発されていた部分なんですが、やはり情報や器機を操作するのは人間でして、ヒューマンエラーに起因するトラブルというのは一向に無くなりませんね。

しかし子ども達でも、

「ネットに個人情報は記さない」

「怪しい人とは距離を置く」

といった自分を守るための意識は根付いていると思うんです。

ただ先に述べた情報の取り扱いがカジュアルになりすぎていることで、情報のリスクに気づいていない子ども達は多いと思いますし、トラブルは人ごとのように感じているのかもしれません。
そのため、SNSやネットでトラブルに直面したときの対応策を知らない子ども達も多いと思われます。

今回の事件に照らせば、被害者と容疑者の間でトラブルが発生した際、メッセージ機能で直接対応してしまっていますし、そしてリアルで面会しているわけです。
このとき、被害者の女子高生も直接交渉に乗らず、親や専門の相談窓口に相談していれば、対応が変わっていたかもしれません。

往々にしてネットトラブルを「怒られるから」といって親に相談しにくいと思っている子ども達も多く、ちょっと詳しい子どもはネットで相談しちゃうんですね。
これはこれで犯罪に巻き込まれることがあるので、子ども達が自分だけで解決できることはありません。

やはり頼りにすべきは親であり、身近な大人なんです。
それだけに家庭や学校において、相談しやすい時期や環境をつくるというのは大事ですね。

■情報リテラシーのアップデートが急務

さて今回の事件については、まだ解明されていない点も多く、報道で知る段階での話しかできませんが、今回の事件は初期段階で十分に防ぐことができたと思うので、それだけにとても悔しくてなりません。

今回の痛ましい事件を再び引き起こさないためにも、ネットユーザーとしての情報リテラシーがいかに重要であるかは間違いありません。

特に今の児童生徒達はスマートフォンやアプリは操作できたとしても、情報の取り扱い方や社会対応については遙かに未熟です。

未成年は「社会人未満」なのですから。

ですので親を始め周囲の大人達は「社会人の先輩」として、子ども達に現在の情報リテラシーを教えていく必要がありますし、これは急務です。

「子どもの方が詳しくて、大人が追いついていけないんですよ〜」

なんて暢気なことをいっている場合ではありません。

現在の情報化社会を作ったのは、私たち「社会人」なのですから、社会の義務として青少年に対する情報リテラシー向上の機会を増やすべきです。
そのためにも私たち「大人」が最新の情報リテラシーを持っておかないと行けません。

半年経てばトレンドも風向きも変わる時代ですから、私たち大人も情報リテラシーをアップデートする必要があります。