いよいよ大型連休も終わり、本格的に「令和」の時代がスタートした感じがします。

さて今年の連休中も、日本の各地で交通事故が起きていたようですが、この数年、交通事故発生件数は減少の一途を辿っています。

いわゆる昭和40年代の高度成長時代と平成16年をピークとし、昨年平成30年度は43万件とピーク時の半分に減っています。(警察庁発表)

交通事故件数が減った理由はいろいろ考えられますが、
・ドライバー/通行人の交通安全意識向上(免許制度、罰則制度、保険等)
・道路環境等交通インフラの改善(道路舗装、中央分離帯、信号機等)
・自動車の安全性能向上(エアバッグ、シートベルト、自動ブレーキ等)
などが挙げられると思います。

自動車は現在においても社会の発展には欠かせないツールですが、誤った使い方が人の命を奪ってしまう凶器にもなってしまいます。
その一方で、車社会が成熟するにつれて、より安全で快適な社会環境を作り出しています。
そこに生活する私たちの意識も変わっていくため、相対的に交通事故件数や死亡者数の減少として結果が生まれているのだと思います。

■車とスマホ

私の講演では、スマホのことを「車」に例えることがしばしばあります。
車もスマホも、私たちが快適で便利な社会活動を送るために考えられた「道具である」ということです。

現在子どもたちだけではなく、大人の世界でもトラブルが増加しているスマホやSNSといったネットサービスですが、車社会のような規制が少なく、現状ではトラブルが起きやすい状態にあるといえます。

車に比べると、物理的に人の命を奪うような大惨事は起きにくいものの、相手が見えない、流れが読めない、そして自分のことしか分からないユーザーが、気付かないうちにとんでもないトラブルに巻き込まれたり、引き起こしたりする可能性は大いにあります。

そしてその現状を「スマホを持たせるからだ」とか「SNSをさせるからだ」といって、させない、持たせない的な風潮になっている感じが未だに続いています。

■道路は変わる。ネットは変わるか?

スマホを軸とした現在の情報化社ですが、交通事故件数が減少した車社会になぞらえて考えると、同じように「時代が変えてくれる」というようにも思えます。

道路環境の整備と同じく、インターネットも利便や安全性は日々向上していますし、ネット上でサービスを提供するプラットフォーム側も、企業努力でいろいろな制度を導入し、健全なネット活用を目指しています。
(とはいえすごく難しく、険しい道だと思いますが・・・)

インターネット接続のための道具であるスマホも様々な機能を導入しています。この数年で顕著なのはスマホの使用時間を制御できる管理システムです。
Apple(iPhone)で言えばスクリーンタイム、Androidではデジタル・ウェルビーイング)がそれに相当します。
つまりスマホメーカーも「スマホの使いすぎは良くないよ!」と見つめたわけですよね。

このように、道路=インターネットという環境。車=スマホという道具は、既に改善の努力を始めているということです。

確かにインターネットの世界はあまりに広すぎて深いために、目に見えない部分が多すぎて、改善改良にはかなりの時間と企業努力が必要でしょう。
しかしこれからの社会を支えるインフラやツールであることを自覚し、前へ進んでいるということは評価すべき事だと思います。

■最後は「使う人の努力」

道具や環境が変わっていくのであれば、最終的に大事なことは「人の意識」だということになります。

「道路を渡るときは横断歩道や青信号を渡りましょう」

ということは、未就学の子どもたちでも知っていることです。
なぜ知っているかというと、親や保護者から「危ないぞ!」としつこく言われ続けてきたからです。だから多くの子どもは習慣として身に付けています。

ネットの世界で言えば、「ネットに不用意なことを書かない」とか「長い時間動画ばっかり見ない」とか、そんな感じでしょうか。

自分のスマホを持たない小学生であっても、正しいネットとの向き合い方を意識させ、習慣づけないといけませんね。

中高生レベル以上になれば、自分の使い方だけではなく「他者との付き合い方」が課題の中心になるでしょう。
さらには自分の身を守るために安全やプライバシーの意識を強めることも必要です。

つまりはスマホやネットを利用する「人」をどのように育成するかが大きな鍵になるということです。

■道具や環境のせいにしない指導を

さて、スマホやSNSを舞台とした情報リテラシー育成の重要さは日に日に増しています。ネットの技術も日進月歩で進化するため、「指導」といっても簡単ではありませんよね。

だからといって、スマホを持たせないとか、SNSを使わせないという指導は「臭い物に蓋」的指導だと思います。
臭い物に蓋をする指導は、問題の先送りであり、指導とは言えません。
今の子どもたちは数年後、必ず一人の社会人として世に出るのです。
数年後の社会がどのように変化しているかは私にも予測することはできませんが、少なくともより深くなる情報化社会で生きていくための習慣作りは必要だと思います。

私は長くインターネットやメディアの仕事に携わり、「情報」と「人」を繋げる視点を常に持っていました。
私にできることは、そんな「情報を人に伝える」ことの大切さについて、子どもたちや保護者の皆様に伝えることだと思っています。

保護者の方においては、「安全な使い方を教える」と同時に、難しいことは子どもや家族みんなで一緒に考えて欲しいと思います。
また自治体や地域の皆様も、人が集うこと(コミュニケーション)の大切さと、ネットでは知ることができない体験や経験の機会を与えて欲しいと思います。

それぞれの立場の大人が、社会人の先輩として、それぞれのアドバイスを途切れなく与えることで、車社会のようにスマホ社会も変わっていくのだと信じています。

長くなってしまいましたが、伝えるを考えるプロジェクト、令和元年の本格的スタートにあたり、思いを記してみました。

令和の時代も、子どもたちのために頑張りましょう!