皆様こんにちは。
株式会社伝えるを考えるの置鮎です。
日々、学校現場や自治体の皆様と情報リテラシーやSNS指導についてお話しする中で、この数年の変化のスピードには目を見張るものがあります。
「スマホを持たせる時期は?」という議論をしていたのが昨日のことのようですが、今や話題は「生成AIとどう付き合うか」に完全にシフトしました。
今回は、その生成AIの中でも特に私たち大人が警戒し、同時にその性質を深く理解しておくべき新しい存在―xAI社の「Grok(グロック)」についてお話しします。
このAIは、ChatGPTなどの「優等生」とは少し毛色が異なります。
これからの子ども達が泳いでいく「情報の海」がどれほど荒く、そして魅力的なのか。
それを象徴するGrokを通して、私たち大人が持つべき「覚悟」について考えていきましょう。
「優等生」ではないAIの登場
これまでの生成AI、例えばChatGPTやGeminiは、開発者が厳重にセットした安全装置の中で、倫理的に正しい回答をするように設計されていました。
いわば教科書的で、丁寧な「優等生」です。
しかし、Grokは違います。
最大の特徴は、X(旧Twitter)とリアルタイムで直結していること。
つまり、世界中で今つぶやかれている「人々の生の声(本音、感情、そして時にはデマ)」を瞬時に学習し、それを回答に反映させるのです。
これは、教育現場や保護者の皆様にとっては、非常に悩ましい問題を突きつけます。
「生きた社会」か、「デマの温床」か
GrokがXのポストをリアルタイムで学習するということは、ニュース記事のような整えられた情報だけでなく、「誰かの偏った意見」や「未確認の噂話」も知識として取り込むことを意味します。
これをどう捉えるか。
ポジティブに見れば、教科書には載っていない「多様な視点」や「世論のうねり」を肌で感じる、極めてリアルな社会科見学のツールになり得ます。
しかし、ネガティブに見れば、フェイクニュースや陰謀論がトレンド入りしている時、Grokはそれを「事実」として子供たちに提示しかねないということです。
さらに恐ろしいのは、AIが生成した偽情報がXに溢れ、それをまたGrokが学習するという偽情報の循環、つまりエコーチェンバー化してしまうことなんです。
まだ批判的思考(クリティカルシンキング)が育っていない子ども達が、このツールを無防備に使えばどうなるか。
偏った思想や、刺激的なデマを「AIが言っているから正しい」と鵜呑みにしてしまうリスクは、従来の検索エンジンの比ではありません。
「皮肉」や「冷笑」を学ぶ危険性
私が特に懸念しているのは、Grokに搭載されているファンモードの存在です。
Grokはあえて皮肉やブラックジョークを交えた回答をするように設計されています。
数学やプログラミングの家庭教師としては極めて優秀な性能を持つ一方で、言葉の選び方に関しては「攻撃的」になり得るのです。
もし子供たちが日常的に、皮肉めいたAIとの対話を楽しんだとしたらどうなるでしょうか。
「相手を論破すること」や「冷笑的な態度をとること」が、コミュニケーションとして面白い、あるいはカッコいいと勘違いしてしまう恐れがあります。
これは、ネットいじめやSNSでの誹謗中傷を加速させる「心理的な土壌」を作ることにも繋がりかねません。
企業の社員研修でもよくお伝えすることですが、「能力が高いこと」と「人格(倫理観)が優れていること」は別です。
Grokは能力は高いが、倫理観においては「やんちゃな無法者」の側面を持つツールであることを、まずは大人が理解する必要があります。
逆転の発想:「反面教師」としての活用
では、Grokは子どもにとって「悪」なのでしょうか?
私は、必ずしもそうとは言い切れないと考えています。
むしろ、「ガードレールが緩い」からこそ、最強の教材になり得る可能性を秘めています。
ただし、それは「リテラシーのある大人が隣にいる場合」に限ります。
安全なプール(フィルタリングされたネット環境)で泳ぐ練習も大切ですが、いつかは荒れた海(現実の社会)に出なければなりません。
Grokが出してきた回答に対し、
「なぜAIはこんな皮肉を言ったんだろう?」
「この情報のソース(出所)はどこだと思う?」
「本当にこれが事実かな?」
と問いかける。
つまり、Grokを情報の真偽を見極めるトレーニング相手(反面教師)として使うという考え方です。
「AIの言うことだから正しい」という神話を壊し、「AIでさえ間違えるし、偏る。
だから最後は人間が判断しなければならない」という事実を体験させるには、これほど適したツールはありません。
私たち大人への提言:ツールの禁止より「鑑識眼」を
xAI社自身が「13歳未満の利用は想定していない」としている通り、現状のGrokを子供に自由に使わせることは推奨できません。
特に画像生成機能などが悪用されるリスク(性的・暴力的なコンテンツの生成)は深刻であり、フィルタリングやペアレンタルコントロールの重要性は以前にも増しています。
しかし、禁止すれば済む話ではありません。子ども達は遅かれ早かれ、こうしたテクノロジーに触れることになります。
私たち大人が、教育関係者が、そして保護者の皆様が取り組むべきは、以下の3点です。
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「AI=正解」という認識を捨てさせる AIは「答え」を出すマシンではなく、「情報の断片を繋ぎ合わせる」マシンに過ぎないことを教えること。
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一次情報に当たる癖をつける 「AIがこう言った」で終わらせず、「元ネタはどこ?」と確認する習慣を、家庭や教室での会話に取り入れること。
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言葉の「体温」を伝える AIが皮肉を言ったとしても、生身の人間関係では「相手を尊重する言葉」が必要であることを、大人の背中を通して伝え続けること。
GrokのようなAIの登場は、私たち人間に「お前たちは情報をどう扱うのか?」「自分の頭で考えられるのか?」と問いかけてきているように思えてなりません。
道具は進化します。
使う側の人間もまた、進化しなければなりません。
子ども達を情報の荒波から守る一番の防波堤は、フィルタリングソフトではなく、私たち大人の「対話する力」なのです。
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