先日福岡県の高校で、生徒による教師への暴行事件が発生し、その様子が動画として公開されてしまいました。
福岡・博多高校の加害生徒が自主退学 9月29日付で逮捕後10月2日に釈放
10/3(火) 12:38配信(ねとらぼ)
報道によれば、逮捕された生徒が授業中に通信機器を使用していたことを注意され、それに激昂して教師に暴力を振るったというものです。そしてその様子は別の生徒に動画として記録されており、更に別の人を通じてSNS上に投稿され、今回のような反響を呼ぶことになります。
暴力事件自体は言語道断ですが、意識すべきはこれまで外部に知られることがなかったことも、情報として簡単に流出してしまうという現状です。
特に今回のような暴力行為や、生徒間で言えばいじめ行為などの 不快で問題のある行動は、第三者によって動画(画像)として記録されてしまう可能性があり、そのデータが存在すれば、何かのきっかけでネットに流出、拡散ということに繋がるでしょう。
決定的瞬間とか興味をそそる使われ方みたいな感じで、イメージ的には面白半分で不謹慎な捉え方されるかもしれませんが、今回のケースにおいては学校での暴力行為を明るみにしたことで、結果的に正義のための動画として受け取られているのではないでしょうか。
この現象はスマホやSNSの普及というレベルを突き抜けた話であり、「記録をする」とか「証拠を残す」という、ある意味監視カメラやドライブレコーダーとして活用されることが浸透しているということです。一般人が撮影し、SNSに投稿した事故や災害の現場の画像や動画がテレビでも放映される時代ですから、これも当然の流れですね。
別の見方をすれば、現場にいて、不快な気持ちを抱いている生徒からすればSOS的な役割を果たしているのかもしれません。
今回の件で、生徒は逮捕され、ネットに流出したことで暴行事件が明るみにでてしまいました。SNSの記事は5万数千件拡散され、さらには生徒の個人情報もネット上で暴かれています。生徒は学校も自主退学していますが、まずは自分の落ち度と招いてしまった現状を理解し、しっかり反省してほしいと思いますし、ネットの情報が彼の反省と出直しに水を差さないことを願うばかりです。
■学校側のコメントに「?」
ただ気になったのは、早々にリリースされた学校側のコメントです。
お詫び「生徒による問題行動と今後の対応について」
2017.10/2 学校法人博多学園
文面には暴力事件そのものがいけないという道徳的指導が不十分であったということが記されています。
ここまではいいのですが、中盤で「SNS利用の危険性」とか「ITモラルが不十分」といった部分があり、私も一瞬首を傾げてしまいました。
恐らく気になったこの部分は、撮影した動画をネットに勝手に上げたこと・・・それがいろんな人に迷惑をかけてしまった・・・という点に関しての見解なのだと思います。
しかし今回の件はそもそも暴力行為自体が問題であり、動画が流出したことは問題の本質ではありません。むしろ動画の流出は事件を明るみにしたという点でプラス理解されています。
それなのに動画の拡散をSNSの問題とか情報モラルなどと扱ってしまうと、「学校側はトラブルが明るみになってしまうと困るんだ」などといった解釈を生みかねない・・・コメント自体が事態を正確に理解していないイメージを見る人に植え付けてしまうのではないかと気になってしまいました。
コメントを早急に出すことは姿勢として正しいことだと思います。
ただもう少し慎重になって良かったのかとも思います。
事態を早急に収拾したかったのかもしれませんが、このコメントこそ情報モラルに欠いたイメージを感じさせます。
■いろんな側面で情報を扱う大切さ
スマホというライフレコーダーと、SNSという簡易報道媒体の存在は、思わぬところで「情報」を発生させます。この背景を理解し、課題や対応策を考えなければなりません。それが「情報モラル」です。生徒やユーザーの一人一人がそれを学ぶべきですし、学校や会社なども慎重に対応すべきです。「情報」を理解(認識ではない)するということは、これからの情報過密社会では社会人として不可欠な能力です。
またそれらの「情報」がどのような意味合いを持ち、影響を与えるのかを想定するべきです。今回のケースだと、事件を明るみにした「成果」としての側面と、逮捕された生徒の個人情報が流出してしまい、生徒が立ち直る場を奪ってしまいかねない「害」としての側面があります。
つまり善し悪しがあるということです。
さらに情報は情報の伝え方により、受け手の印象と対応が大きく変わっていくということもあります。
今回のように事件という契機もあれば、無意識にいつのまにか問題が発生しているというケースもあるかもしれません。
「情報」 には多くの観点があり、これをすべて正確に把握することはかなり難しいことです。
常にいろんな観点を持つことや冷静であることはもちろん、油断することなく「情報」に向き合うことが大切です。
そのように情報と向き合った結果、適切で正しい対応、指導に繫がって欲しいと思います。
今回の一件、私の地元福岡でのトラブルということで、余計に身近なことだと捉えています。
そして私自身、「情報」との向き合い方を考えさせられた事件でもありました。