待ちに待ったラスコー展
福岡では多くの小中学校が夏休みに入りました。
それに伴い、6月から7月にかけて続いた学校での情報モラル講演も一段落してきました。
講演予定の無かった今日、太宰府市の九州国立博物館にて開催されている「ラスコー展-クロマニョン人が見た世界-」を見に行きました。
歴史が好きだということもあるのですが、このラスコー洞窟や、世界最古の洞窟壁画といわれるショーヴェ洞窟には別の思いがあり、大変興味がありました。
会場には3Dスキャンで精密再現された洞窟内部を見ることができます。
リアルに再現された洞窟壁画の迫力は圧巻です!
一部の壁画には線刻がライトアップされていて、より芸術性が高まりますね。
また当時のクロマニョン人の姿をリアルに再現した等身大の像も展示されていました。
洞窟壁画は世界最古のメディア
ショーヴェ洞窟の壁画は3万6千年前、ラスコー洞窟の壁画は2万年前、いずれも後期旧石器時代のクロマニョン人が描いたとされています。洞窟という場所に馬や牛等の動物が描かれていますが、それがどういう目的で描かれたのかははっきりしていません。ですが電気もない時代、わざわざ暗い洞窟の奥深くに描くということは、芸術的な意味合いが強いのではないかとも言われています。
少なくとも絵を描くことで、他者に某かのメッセージを伝えているのだとすれば、ショーヴェ洞窟壁画は世界で最も古い「メディア」であると言えます。ラスコー洞窟の壁画もより芸術性が高まった「メディア」です。つまり「メディア」というものは、何かを伝える手段として数万年前から地続きなんだということですね。
2017年の現在、私は多くの学校等でメディアに関するお話をさせていただきますが、私は30年近く広告の仕事、つまりメディア側の立場で仕事をしていたため、「メディア」という言葉や括りに独自の意味合いを持っていますし、その影響力も体験しています。
そんな私にとって、「メディア」の原点に帰ることは大切なことだと思っています。
従来の新聞や電波(テレビ、ラジオ)に加え、インターネットメディアが社会活動に浸透し、テレビやラジオ、ゲームといったいくつかの「情報再生機」が普及してきました。
そして現代、バラバラに存在した情報再生機がひとつに統合されたものがスマートフォンです。これから進む情報基盤社会において、スマートフォンの役割は良くも悪くも大きな影響を及ぼします。
だからといってスマートフォンを「情報再生機」としての一面だけ捉えて、「メディア指導」というのは少しずれていると思います。
これから子ども達が飛び込む情報基盤社会において、大切なことは情報を活用する能力であり、スマートフォンの正しい使い方は再生機操作の一部でしかありません。
「何を伝えるか」といったメディアの本質と役割を理解し、現在そして未来の社会活動を想像しながら、「メディアの新しい活用」に取り組むべきだと感じています。
さて2万年前にラスコー洞窟壁画という「メディア」で某かのメッセージを伝えようとしていたクロマニョン人ですが、果たして彼らは現代のような情報社会を見たらどのように思うのでしょうか?
そんなことは知る由もありませんが、多分これから数万年経っても相手に思いを伝えるメディアの存在と意義というモノは変わらないんだろうな、としみじみ感じる次第です。